成蹊医会

平成27年度 成蹊会プレメ同窓会、講演会のご報告

演題「日本国の安全保障は飛耳長目で、今の自衛隊の実力は?」
講演者 元内閣安全保障室長 佐々淳行氏(旧制高校23回卒業)

平成27年5月24日、吉祥寺第一ホテルに於いて平成27年度成蹊会プレメ同窓会総会(会長 プレメ6回嶋田甚五郎先生)及び講演会が行われました。佐々淳行氏の講演内容を踏まえ、その後の懇親会の様子等をご報告致します。

http://www.alaska-net.co.jp/palace/佐々淳行氏は戦国武将・佐々成政の末裔の家系で、成蹊旧制高校最後の年度である23回のご卒業です。佐々氏の記憶によると、当時の成蹊同級生の東大合格率は50%を超えていたとのことです。

旧制高校最終年度ということで、後がないという意識もあったが、皆、天下国家の為に働くという気風があったとのことです。演題名にある飛耳長目とは、吉田松陰が門下生に説いていた言葉で、遠方のことをよく見聞することができる耳目を持つ、つまり物事の観察に鋭敏で、見聞が広く精通しているという意味で、今後の日本の安全保障には情報収集能力を高め鋭敏に反応し、危機管理能力を高めていく必要があることを実例を挙げながらご講演されましたので、その内容を抜粋し以下に記します。

私は旧制成蹊高校23期卒業、安倍総理は24期下、丁度二回り違い。私は84歳になる。危機管理の専門家として歩んできた。東大安田講堂事件、よど号ハイジャック事件、あさま山荘事件などを担当し、昭和天皇大喪の礼を最後に引退した。引退したが引退させてもらえない。今まで多くの政治家と関わってきた。名誉棄損で訴えられる覚悟で批判や批評を行った。著書「私を通り過ぎた政治家たち」は是非読んでいただきたい。7月には「私を通り過ぎたマドンナたち」を出版予定。こちらも是非読んでいただきたい。

http://www.alaska-net.co.jp/palace/湾岸戦争当時、多数の外国人が空爆を防ぐために人間の盾として利用されたが、その中に500人程の日本人が含まれていた。500人の救出の為に、日本政府から特使派遣を進言した。男性特使は自身が人質にされてしまう危険性もあった。そこで、女性を特使に任命し、「私達の子供を返しなさい」と、日本人全体の母という立場で交渉する戦略を立案した。

大物女性政治家に役割を委任したが断られた。結局、国会議員広中和歌子さんが役目を受け、命がけで交渉に飛び立った。この時の日本政府の対応は残念なもので、往復の旅費も十分に支給されないものであった。

広中氏は自費で交渉に向かった。サダムフセインに会うことは叶わなかったが、革命評議会議長に会うことができ、日本人の解放を強く主張した。この結果、人間の盾にされていた日本人500人は解放され、日本に帰国することができた。帰国時の日本政府の対応も十分なものではなく、開放された日本人全員を輸送できるだけの準備ができず、有志の日本人が飛行機をチャーターし救出に向かった。

後日広中氏はこの偉大な仕事を自ら宣伝することもなく、世間にもほとんど知られていない。広中氏は女傑だと思った。現状の法律ではこのような状況の邦人を救出することができない。邦人を救出できる国家でなければならない。

国家を守るには高い情報収集能力が必要だ。日本は海外諸国から秘密を守れない国、大切なことは話せない国とみられている。驚くべきことに今まで大臣や、政務次官等にも秘密遵守義務はなかった。今回、政治家にも秘密遵守の法律が成立した。
ゴズロフ大佐の事件では、秘密を漏洩した自衛官は懲役1年の実刑判決を受けたが、判決を受けた本人が「こんなに軽くていいんですか」と話したという。

現在の日本は消極的情報収集しかできない。これは、スパイ活動を嫌う戦後の日本の気風にも起因している。日本の情報収集力は弱く、秘密保持にも問題があるため、CIA、KGB、MI6、等に全く相手にされていない。外交官に国際情報官の資格を与え、積極的情報収集を可能とし、国際的なテロ活動等に備えなければならない。

北朝鮮の金正男が日本に拘束されたことがある。当然、北朝鮮に拉致されている日本人奪還のカードにすると思った。しかし、北朝鮮との関わりを恐れた当時の外務大臣判断で日本国の飛行機に乗せ脱出させてしまった。

国家公安委員会にも何も相談はなかった。情報はすべて総理大臣に集まる仕組みにしなければいけない。国際情報が全て外務省に入り、直接総理大臣に入らない仕組みを作ったのはマッカーサー元帥であり、これは日本弱国化政策の一つである。今日においても国際情報は全て外務省に入り、総理大臣に直接情報を入れる機関はない。内閣情報局を復活させ、総理大臣に直接情報が入る仕組みをつくるというのが私の案だ。

今日1億2000万人の日本人の内、常時1200万~1300万人の日本人が海外で生活している。いつの間にか日本は大変な国際国家になっている。にも関わらず情報収集力が弱いことが問題だ。日揮の事件の時にも情報はほとんど入ってこなかった。情報収集、諜報(intelligence)が大切だ。現在の日本は治安、防衛、外交、全てにおいて発展途上の状態にある。経済に重きを置きすぎてきた。これからは安全保障力を高める必要がある。

安倍総理は「美しい国日本」を掲げているが、本来は「美しき強き国日本」であった。強きは削除されたが、これからの日本に必要なのは「強き」である。安倍総理を岸総理の孫ということで、危険視されることがあるが、昔の軍国主義に戻ろうとしている訳ではない。安倍総理を支持し長期政権にしたい。

日本の自衛隊は強力な戦力を持っている。6隻のイージス艦、32隻のミサイル艦を保有している。ハワイでの合同演習において日本のミサイル防衛はスーパー、エクセレントと評されている。ノドンは3分で到着するが、40発までは同時に落とすことができる。
安倍総理とは3代にわたる付き合いがある。真の政治家とはStatesman(賢明にして偏見のない資質を持つ政治家)であらねばならない。そして、安倍晋三現総理大臣はその資質があり、大きな期待をしている。安倍総理の政策を支持したい。

以上が講演内容の抜粋です。同窓会講演会というクローズな環境ということもあり、とても自由に過激な発言もされておりましたが、できるだけ講演内容に忠実に記載致しました。賛否両論、訂正等様々ご意見はあろうかと思いますが、記事に対してのご批判はどうかご容赦ください。

その後、佐々氏はお帰りになりましたが、プレメ同窓生の懇親会が行われ、私を含む数名の成蹊医会のメンバーも参加させて頂きました。よど号ハイジャック事件、ダッカのハイジャック事件と二度のハイジャック事件に遭遇された穂刈先生のお話や、満州から命がけで引き揚げてきた北村先生の体験が今年の夏映画化『ソ満国境 15歳の夏』されるというお話など、佐々氏の講演にも引けをとらない興味深いお話も聞くことができ、大変有意義な一日となりました。

✰ 北村先生の実体験の映画化『ソ満国境 15歳の夏』本年夏公開予定です。同世代のお子様などいらっしゃる方は是非是非、そうでない方も是非映画館に足をお運びください。
http://15歳の夏.com/

✰ 成蹊同窓会会長・谷正紀氏より、成蹊会ホームページに、成蹊卒業生医師、歯科医師の紹介を載せたいいと御提案がありました。成蹊同窓生に診てもらいたいという需要があるようです。是非実現させたいと思いますので、ご希望の方は成蹊医会事務局までご一報ください。
成蹊医会事務局 担当 進藤幸雄 yukio@ooguno.com

✰ 最後に、平成28年度成蹊医会総会のお知らせです。
平成28年度成蹊医会は、毎年行われてきた数寄屋橋ニュートーキョービル閉鎖に伴い、開催場所の変更を予定しております。
平成28年2月11日(建国記念日) 12時より
レストラン・アラスカ パレスサイド店
http://www.alaska-net.co.jp/palace/
を予定(予約済)しております。

成蹊医会 事務局
進藤幸雄