かわしま神経内科クリニック 川嶋 乃里子
当クリニックが参加している新薬国際治験のアジア地域会議があり、4月中旬に台北へ行って参りました。自由時間は少なかったのですが、故宮博物館を半日観光しました。中国の長い歴史を改めて思い知らされると同時に、戦争の最中にこれらのたくさんの展示物を大陸から持ってきた孫文・蒋介石らの偉業?に驚かされました。
博物館内は大変混雑しておりました。少し前までは、中国人観光客は中国から台湾へ直接入国できず、第3国に一度寄らなければならなかったのが、直接入国できるようになったため、大陸からの中国人観光客(団体客)が急増したとのことでした。博物館のお土産品売り場も、人が群がり大変な賑やかさでした。
会議はおもしろいものではありませんでしたが、翌朝、地元の人たちに人気のある朝粥の店へ友人たちと行きました。台湾では、自宅ではなく、このようなお店やTake Outして職場で朝食をとることが多いそうです。豆乳粥の人気があるようで、それにパンのような餅を浸したり、卵の入った餅を添えたりするようでした。写真の店は朝6時からやっているそうです。売っている横で、餅を焼いてしており、なんだか高松の讃岐うどん屋さんに似ていました。
皆様がよくご存じのように、他の先進国ですでに発売され5年以上たっているのに未だ日本では使用認可されない新薬は多数あります。インドではジェネリックとして既に発売されている薬剤でも、日本では個別にPhase 2から治験をするため時間がかかり、国内治験がうまくいかない薬は発売の目途が立ちにくいのが現状です。
韓国や台湾などでは、はじめから治験をやり直すのではなく、副作用や容量確認などの簡単な検討後新薬を発売しているそうです。
国際同時治験は新薬開発のスタンダードになりつつあり、他の国と同時に新薬の認可がおりるという点で日本にもメリットがあります。現在当クリニックが参加している2つの治験では、アジアの血液検体はシンガポールの検査センターに集められて検査されます。1つの治験ではインドからFax送信機能付心電計がこちらへ送られてきて、検査結果をインドへ送信します。
診察記録などは、開発会社が用意したWeb上のサイトへ書き込みます。
シンガポールには、巨大な検査センターがあり、おそらく国際空港からのアクセスもよいのでしょう。国を挙げて世界中から優秀な研究者を集め、先進的設備と十分な研究費で成果をあげ特許などを増やそうとしています。インドでは、国の政策として、他の国より早くジェネリックを発売できると聞きます。香港には、ジェネリックなどをアジア諸国に配送するための巨大倉庫があるようで、日本で未認可・他国で標準薬をネットなどで買うと香港から送られてきます。フィリピンは国策として看護師・介護士養成に力を入れています。
医療・福祉の技術を国の経済活性化の手段の一つとして考えている他のアジア諸国の政策を垣間見ると、日本では医療保険制度の充実に話が集中しすぎている気がします。長期的でグローバルな視点をもって、どこにお金をかけるべきか多角的に考えるべき時でもありましょう。
2009年4月29日