三鷹市医師会 会長 角田 徹 (高校25回)
今まで老人保健法によって行われていた基本健康診査が、今年の4月から特定健診・特定保健指導へと大きく変わりました。
まずその実施主体が保険者となりました。今までの基本健診は市区町村が行っていましたが、例えば三鷹市国保の加入者については三鷹市の国保課が健診の実施主体となったのです。65歳以上であっても、それぞれの方が加入している医療保険者(社会保険、組合健保など)がその方とその扶養者の健診・保健指導を行うことが義務化されました。そしてそれぞれの保検者が、特定健診・特定保健指導を行う組織・団体と契約する形となりました。特定健診の対象者は40から74歳までです。75歳以上は、後期高齢者医療制度により、広域連合が健診を行うので特定健診とは別制度となります。
特定健診においては、糖尿病等の生活習慣病、特にメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の該当者・予備群を減少させるため、保健指導をするものを効果的に抽出することを目的としています。このため、その健診項目は今までの基本健診の項目と異なります。
身体計測で腹囲が加わること、検査項目ではGOT、GPT、γ-GTP、LDL、HDLコレステロール、TG、空腹時血糖(空腹時血糖が測定できない際はHbA1c)、尿蛋白、尿糖が基本的な項目です。貧血検査や血清クレアチニン、尿潜血は必須項目ではありません。心電図検査、眼底検査、貧血検査は“詳細な健診項目”として前年度の健診所見から医師が必要と判断した場合に行われることになりました。胸部レントゲン検査は含まれておりません。
国の定めた特定健診の項目は上記のごとくですが、昨年までの基本健康診査の内容をレベルダウンすることのないように、各自治体では独自の検査項目としてクレアチニンや尿酸、HbA1c、胸部レントゲン、心電図などを追加している所が多いようです。
特定保健指導の対象者の選定は腹囲の基準(男85cm以上、女90cm以上)にあてはまる場合と、腹囲には当てはまらないもののBMIが25以上の場合が対象です。言い換えれば、その他にいくら異常値があっても、上記に該当しない場合は特定保健指導の対象とはなりません。対象者は、それに加えて血圧、血糖、脂質の基準と喫煙のリスクファクターにいくつ該当するかにより、特定保健指導の階層化が行われます。特定保健指導については、動機づけ支援、積極的支援に分けられますが、それぞれ6ヶ月間に及ぶ指導となります。
三鷹市医師会では特定保健指導も全面的に受託しています。特定健診の結果説明時に現場で特定保健指導の階層化を行い、動機付け、積極的支援に該当した対象者に対して1回目の指導を行います。支援プランも作成し6ヶ月間のスケジュールを説明します。動機づけの場合は6ヶ月後にその成果を往復はがきで答えていただきますが、積極的支援の場合は初回面接後毎月支援レターを送り状況を返信してもらい、その間2回のグループ指導が入ります。初回の指導を現場で行ってもらった後は、医師会から一括して対象者に支援レターを送り、グループ指導も医師会館を使って行っています。
国の示した方法では、特定健診の結果をもとにその保険者が階層化を行い、その結果を対象者に通知することになっています。しかし、これでは特定健診の結果が判明してから特定保健指導が始まるまで最低でも1ヶ月以上かかってしまうので、対象者のモチベーションは下がり、有効な指導ができるとは思えません。
当医師会の試みはかなり独創的で、その結果はふたを開けてみないと分からない状況です。しかし何回も重ねた市民会議や当会での検討の結果、この方法が最善と信じて開始いたしました。国は今後5年間この制度を続け、その後結果を検証する予定としています。目標値も特定健診受診率、特定保健指導受診率、曳いてはメタボリックシンドロームの減少率などを決めています。国が示した枠組みの中で、各地域がどれだけ有効なそして具体的な方策をとれるか、が問われています。また、機会がありましたら当市での結果をご報告したいと思っております。