成蹊医会

今、日本では、勤務医でもなく開業医でもないパートで働く中堅医師が増えています。私のまわりにも3人おります。

かわしま神経内科クリニック 川嶋 乃里子 (高校25回)

<<フリー医師増加中>>

m3.comをすでにお読みになった方も多いと思います。

私が勤務医を辞めたわけ
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今、日本では、勤務医でもなく開業医でもないパートで働く中堅医師が増えています。
私のまわりにも3人おります。

そこで、今年4月より常勤の勤務医を辞め、いくつかの病院でパート勤務している40歳代の消化器内科医師(男性)にインタビューしました。

1.どうしてそのような働き方を選ばれたのですか?
2.専門領域に専心するためです。僕の専門は、肝癌などの血管内治療なのですが、総合病院に勤めていると、専門以外の仕事が多すぎる。専門領域の仕事の量は、科によって違う。しかし、総合病院に常勤勤務していると,当直や救急外来をどの医者も同じように義務として行うようにいわれる。40歳を過ぎると、当直明けに血管内治療を行うのは、体力的につらく、仕事の質も下がりがちになるだろうし、合併症などのリスクが増えると思う。専門領域に専心する職場環境を病院管理者側に要求したが、理解されなかった。
現在の日本の勤務医の多くは、雇用契約書もなく働いており、仕事の内容が明快にされていない。これもおかしな話である。
医師の頭数だけそろえれば良い時代ではない。そのようなことでは、患者さんは納得できない筈である。しかし、そのことを病院管理者側は理解していない。 

1.何故、今フリー医師が増えていると思いますか?
2.開業医が増え開業しにくくなったこと、多くの総合病院勤務が中堅医師には過重労働の環境であること、一方で質の高い医療を確保するのに技術のある医師を総合病院は求めていることなどから、現在の状況があるのだろう。

Q.現在の医療現場に求めることは?問題を感じることは?
A.
1.プライマリケアも救急もともに専門性があり独立させるべきなのに、プライマリケアや救急は誰がやってもよいと多くの病院管理者は考えている。このため、他の専門領域に専心したい医師は荷重労働となる。
2.日本ではチーム医療というと医師同士の横の連携と考えている人が多い。チーム医療とは、ある一人の患者さんに関与する全てのコメデイカルが協力して行うもので、医師だけで何でもする時代ではないと思う。
3.プライマリケア医は、ロールプレイが好きで、研修医を喜ばせているが、本来の患者中心の医療が置き去りにされているように感じることがある。
4.新研修制度のなかで、研修医はいつまでも学生気分で医師としての自覚が育たないように思う。一方で、学生の時、研修1年目と何度も行く先を探すのに時間を費やし本来の仕事に専念しづらいようにもみえる。研修病院は教育スタッフが十分いることはなく(米国とは比較にならない)、研修内容の充実は当分難しい。また、研修病院の教育スタッフは、いかに研修医をうまく集めるかに腐心するように再教育する公的研修に出るように義務づけられている。おかしな話である。
5.医療費の配分の仕方が不適切だ。たくさんの救急医療に対する公的補助金が、夕方から夜間に受診する感冒など軽症の患者に使われている。軽症なのに夜間救急を受診する場合は、本人から医療費を高くとるべきである。

文責 川嶋 乃里子 (高校25回)